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古道具浪漫

山村留学指導員 山口楓雅

 脱穀の季節がやってきた。地域の方からお借りした、足踏み脱穀機や唐箕(とうみ)といった古い道具が並んでいる。子どもたちが面白がって動かすのを見て、「使い方間違えると大けがするぞ」「絶対壊すなよ」と釘(くぎ)を刺すが、これらの道具を前に誰よりも目を輝かせていたのは、他ならない私自身であった。

 最新鋭の科学技術を用いる相手に対して時代遅れの道具で挑む―そんな古典的な映画展開が何とも格好よく、御多分に洩(も)れず大好物。私の古道具趣味はそんな子供心が発端だ。気がつけば、旅先で中古品店やアンティークショップばかり巡り、アナクロな道具たちに見惚(みと)れている。
 かくして手に入れた数々の道具の中で、特に気に入っているのは登山装備だ。キスリングザックやマルキルボトル、木製ピッケルなど、半世紀前に全盛期だったモノを纏(まと)い、山に入る。現代装備に比べ重く、快適さは欠けるが、頑丈かつシンプルで扱いやすい。激藪(やぶ)や岩稜(がんりょう)帯といったルートを愛する私にとっては頼もしい相棒たちだ。
 効率的で便利な現代社会。そんな時代に逆行するように、昔の道具が魅せる世界にのめり込んでいく。この時代でも見劣りなく使えるものもあれば、一癖も二癖もあるヤツもいる。使えば使うほど、当時の世相や先人の知慮と根性に思いを馳(は)せることができる。そんな時空を超えた浪漫を、古道具は語り掛けてくれる。
 奇しくも、「暮らしに学ぶ」山村留学の職に就き、脱穀機よろしくこれまで無縁だった古道具に触れる機会が増えた。嬉しいことに、この環境にはこれら道具の使い手がたくさんいる。興味津々で教わりながら、「昔の人ってすごいね!」と言う留学生の飾らない笑顔をみて、古道具浪漫を共に感じられることが、たまらなく楽しい。

写真:日の出を迎える木製ピッケル
写真:日の出を迎える木製ピッケル















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