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日常と非日常

山村留学指導員 松浦実穂

 利賀には、世界的に有名なSCOTという劇団の拠点がある。夏の終わりには、SCOTサマーシーズンとして、様々な演出家や演者による演劇が上演される。毎年の目玉である野外劇場での花火劇「世界の果てからこんにちは?」を留学生と観覧した。

 SCOTは、一九七六年に利賀村に拠点を置いて以来、村と協力して劇場などを増設したり、演劇祭を開催したりしてきた。だから利賀の住民にとっても馴染(なじ)み深いのがSCOTの演劇、とりわけ子どものうちから花火を観て楽しめる「世界の果てからこんにちは?・?」通称「果てこん」であるらしい。
 九月七日、野外劇場は何百人もの人で満員、階段にも人が座り、「果てこん」は大賑(にぎ)わいで開演した。一人ひとり違う感覚を持ち違う反応を見せながら、それでも同じ方に眼差しを向け、手拍子が揃(そろ)う劇場ならではの一体感が楽しい。留学生も、笑い声をあげたり花火に見とれたりと、予想以上に観劇を楽しんでいるようだった。
身近な利賀の山々や空が背後にそびえ、演者のコミカルな台詞からも感じられる普遍性や日常感。たくさんの観客や美しい舞台、そして鮮やかな花火に彩られる非日常な高揚感。こういう芸術に子どもの頃から触れられるのは、価値観や体験を広げる意味で魅力あることだと思う。春祭りの獅子舞に始まり、利賀では芸術とも言える文化に触れられる機会が多くあり、日常と非日常が繋がって繰り返される。農作業をはじめ自らの生業(なりわい)に従事しながら、自然の中に楽しみを生み出し文化を繋げていく。本来の暮らしとは、こういうものだったのかもしれないと思いを馳(は)せる。
SCOT主宰で「果てこん」演出の鈴木忠志さんの、演劇と利賀村を大切に思う挨拶を聞きながら、様々な文化と手を携えてきた南砺市で山村留学ができていることを、ありがたく嬉しく思った。

「開演を待つ留学生」
写真:開演を待つ留学生















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