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「地図を広げる」

山村留学指導員 山口楓雅

 とある留学生が一枚のプリントを持ち帰ってきた。「とやまみんなの地図作品展」のパンフレットだ。周辺地域の姿を観察・調査し、それらを「地図」として表現することにより、地図や地域に対する関心を深めることがコンセプトらしい。非常に興味をそそられる。過去の入賞作品をみてみると「立山登山頂上アタックマップ」「富山県水力発電所MAP」など、私の琴線に触れる作品が次々と目につく。

 何を隠そう、私が探検や野外活動の道に進んだのは、幼少期に地元山梨県の水力発電用水路の地図を手にして、それらを巡り廻ったことがきっかけであった。その冒険が地理や建築、産業史などの様々な分野への興味を引き出し、今の自分がある。この作品展に私も応募したいと思ったが、対象は小中学生。持ち帰った当人も積極的ではなさそうだ。
 地図への理解が薄れているこの時代、地図を広げるという行為を見直したい。今や何でもスマホでできるようになった。電波の届かない登山中でさえ、地図をダウンロードすれば自分の位置が分かる。それでは現在地と目的地のみに視野が狭まってしまう。紙の地図を広げ、広い視野で見ることによって、目的地以外の地域にも関心が生まれてくると私は思う。その好奇心を地図に書き込み、出かける。そこで知り得たこと、疑問点をさらに書き込む。この疑問を解消しに、その地図を持って、また出かける。この繰り返しで洗練された地図は、書き手の個性と地域への理解が詰まった、世界に一つだけの宝の地図となるのだ。
 就職面接の際、特技として挙げたのが読図であった。今後はこの特技をさらに発揮し、子どもたちに地図の真髄を教えていきたい。まずは、センターに利賀の地図を大きく広げ、誰もが自由に書き込めるようにしようと改めて思う。

愛用の読図セット
写真:愛用の読図セット















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