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経験がものを言う
山村留学売木学園
山村留学指導員 戸田佐和子
四十二期生の山村留学生活が始まって早一か月。例年同様、特に新入園生たちは基本的生活習慣や生活技術を身につけるべく怒涛(どとう)のような日々を過ごしてきた。ホームシックに悩んだり、集団生活への適応や環境への適合の難しさに直面したりしながらも努力している。一方、継続生たちはがらりと変わった学園の雰囲気に戸惑いながらも奮闘中。幸先の良いスタートをきれたとは言えないが、変化や成長を少しずつ感じている。
GWに、コロナ禍前のように修園生が来村し、二十年近く前から昨年度までの留学生数名が学園を訪問。コロナ禍に小学校中学年の一年を売木で過ごし、現在中学生になった男子も家族と一緒に立ち寄り近況報告してくれた。照れ臭そうな本人に代わりお家の方がお話しされるには、地元で野菜を育てようと借りた畑を作った際、鍬(くわ)を巧みに使いこなし、耕したり畝を立てたりする彼の姿に感心したとのこと。山村留学中の経験(昔ながらの農作業体験)がものを言っていると感慨深そうに語られた。
村滞在中は二泊三日のキャンプを楽しみ、その日のキャンプ飯の予定は鍋だと聞いたので、彼が留学中に仕込んだ味噌や植菌して発生した椎茸を少し持たせた。お家の人に、味噌作りの蘊蓄(うんちく)を傾け、椎茸は自然環境を活かした原木栽培のものであることを正確に説明する姿に頼もしさを感じた。
彼の山留生活当時を振り返ると、作業的な活動に積極的に取り組んでいたとは言い難い。しかし、一年間の様々な体験が血肉となっていたのは疑いようもない。
この時期、学園では大変な労働を伴う体験活動が目白押しで、新入園生たちは受け身で、やらされている感があるよう。だが、継続生たちの見違えるような成長や修園生の事例もあるので、これからも信念を持って多様な体験の場を提供していきたいと思う。
写真:畝立て後のマルチシート張り