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感動の体験

山村留学指導員 松浦実穂

 夏休み明けの八月末、今年も白山登山の活動を行った。日常や週末の活動に際して、私たち指導員は「指導案」という形で計画を立てる。その指導案に記す白山登山の主体験は「感動の体験」だ。留学中に体験してほしいことが様々にある中で、大自然の美しさや、努力の末の達成感に酔う体験を、と願って行うのが、この白山登山ということになる。
 私自身、入職してから山歩きが大好きになり、その中で出会う一期一会の空模様や山容に何度も心を動かされてきた。せっかく留学生と白山へ行く機会、彼らの中には、新しい景色に期待を膨らませている子もいれば、日ごろより体力がいる道のりに、少し重い気持ちで向かう子もいる。人の心がどう動くかなんて不確定なものでしかないけれど、美しさや達成感をどしんと感じられるような景色を見られますように...と、計画しながら願わずにはいられない。

 今回の登山を今振り返って浮かぶ景色のひとつは、山小屋の裏から留学生と見たご来光だ。夜間は雷も鳴ったが、朝は気持ちよく晴れた。雲を越えて刺さってくる陽の光は、自然の美しさを押し付けてくるかのように力強い。何より、一緒にいた数人の、朝陽を眩(まぶ)しそうに望む横顔。留学生がそれぞれ「感動の体験」を得られたのか、私にはわからない。けれど山の景色には、やっぱり何か心に訴えるものがあるなあと思った。
 下山直前、一人が話しかけてきた。「頑張って登ったしさ、景色すごいしさ、下りるのもったいないよ。私ずっとここに居たい」言葉に成果を見出そうとするのも安直なのかもしれないが、これだけでも来て良かったと、なんだか心が温かく緩んだ。

2023-09-P21「ご来光を望む留学生」.JPG
写真:ご来光を望む留学生















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