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「山の幸」

山村留学指導員 主代望都

 四月、英語村は六度目となる新たな春を迎えた。緊張の面持ちで英語村にやってきた子どもたちも、少しずつ生活に慣れてきており、まるで土から伸びてくる芽のように個性を発揮しだしている。

 芽といえば、春は山菜の季節だ。道端、土手、あぜ道などのあちらこちらに、ツクシ、フキノトウ、ユキノシタなどが生えている。サクラやホトケノザの蜜なども春のささやかな甘味の一つだ。興味のない人だったら雑草と一緒くたにして無視してしまいそうだが、食に貪欲...否、鋭敏な子どもたちには山菜や花の蜜がおやつでありご馳走(ちそう)だ。スタッフが教えてあげれば早速その日には「食べてみたい!」と採集や調理が始まっている。

 山菜や花の蜜を楽しむことの醍醐味(だいごみ)は、無限に得ることができないことにあると思う。スーパーで気安く手に入る野菜やお菓子とは違い、汗水たらしても一度に大量に手に入るわけではないし、今後のことを考えて採集のし過ぎには気を付けなくてはいけない。きっと子どもたちもその歯がゆさがあるからこそ、山の幸の有難みを身を以(もっ)て知り、存分に噛(か)み締めることができるのだろう。

 そしてそんな子どもたちの姿を見ていると、私は微笑ましさと同時に羨ましさも感じる。自然の中で自ら山菜を採集、調理するような貴重な原体験を、子ども時代に得ることができることが何と素晴らしいことか。それはまさに野山に暮らす動物たちの一員となり、食物を分け合い共生していることに他ならない。無限に供給されないからこそ得られる感謝の念、楽しむことや味わうことの大切さや素晴らしさを、子どもたちがこの一年で少しでも感じて心に留めてくれたらと切に願う。

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写真:山菜を使ったお菓子作り















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