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冬の山道から

山村留学指導員 松浦実穂

 一月二十一日。今季二回目のクロスカントリースキーの活動は、気持ちの良い晴天に恵まれた。新雪が残る山道はきらきらと明るく、子どもたちの表情も弾む。

 利賀は豪雪地帯だが、今年は比較的雪が少ないらしい。昨年、膝や腰まで雪に埋もれながら、ひたすらに前を見て歩く日が多かったことを思えば、確かに今年の雪は少ないのだろう。ほどよく締まった雪の上を歩けば、傍らには様々な息遣いが見える。ウサギやキツネの足跡。枝垂れた枯れ枝に、上を向く冬芽。ウスタビガやクスサンの繭。樹皮の隙間に垂れている樹液。前方ではクロモジが、夏と変わらず子どもたちの人気を集めている。「冬の方がよく匂うかも」と枝を手に一人が笑う。
 ふと、木の枝に引っかかった薄茶色の何かが目に留まった。ハートの羽根が三枚合わさったような袋状のものが細い蔓(つる)に連なり、袋の中には楓(かえで)のような種が入っている。どこから運ばれてきたのか、大きな木のあちこちに、十五センチメートルほどのそれが引っかかっていた。かわいらしい見た目が気に入って、いくつかを自分のリュックに放り込み、帰ったら調べようと思う。なんだか楽しい。
 センターに戻り、図鑑と並べる。通りかかった子が「それ、ホオズキでしょ」と言う。違うよ?と答えながら、ホオズキを連想する気持ちもわかるなあとも思う。アジサイ? オオモクゲンジ? 似ているものはいろいろあるのに、どれもぴったりハマらない。二日間調べ続けて、ようやく「夏」のページに見つけた正体は、オニドコロの果実だった。山の芋の仲間! 蔓なのに気づかなかった...想像以上の悔しさと嬉しさが沸く。
「冬は、夏には知れない植物の姿が見れるから、また観察してみよう」朝のつどいで子どもたちへかける言葉は、いつも自分の気づきそのものだ。山の四季に身を置いてみたい。これは指導員になる前からの憧れで、私の原点の一つだった。指導員になって、憧れていた「山村留学」を私も過ごしているんだなあと思う今日この頃。















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