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指導者だより

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上達したい気持ち

山村留学指導員 戸田佐和子

 一月半ば、学園生たちを連れて岐阜県にある屋外四百mスピードスケートリンクに活動しに行った。
 売木村では、毎冬小学校裏に整備される県内最南端の伝統の田んぼリンクで小学生がスケート授業に取り組んでいる。そんな地域色の強い活動を中学生(の山留生)にも体験させたく、今冬も決行。

 子どもたちに上手く教えられる自信があまりなかったもののスケート場に行きさえすれば何とかなるという甘い考えを持っていた私。果たして、その考えは的中した。
 学園生の一人が、私が密かに師匠と呼ぶ人に教わっていたのだ。学園からはスケート場に毎シーズン一度出かける程度だが、驚くことに約束したわけでもないのに師匠には必ず遭遇する。事の始まりは数年前。往年の名選手と思われるスピードスケーターに滑らかな滑りで追い抜かされた当時の学園生たちと私は、後ろにくっついてよく観察した。惚(ほ)れ惚れとする滑りはとても速くすぐに離されたが、何度も周回遅れになる瞬間だけでもがむしゃらに食らいつき、真似をすることが上達の近道だと考えた。突如として数人につきまとわれたら不愉快に感じて当然なのに、それどころか師匠は不躾(ぶしつけ)な我々に手ほどきを申し出てくださったのだ。まさに渡りに船。即刻教えを乞うことに。そんな経緯で数年経ち、一方的に決めた師匠に忘れ去られている可能性もあったが、今回既に学園生をコーチしていた師匠に挨拶にいくと覚えていてくださった。覚束ない足取りで滑走する子を見るに見かねて、師匠から声をかけてくださった様だ。更に再度の指導依頼を快諾した師匠は、他の子とも並走しながら一人ひとりの滑りを見て助言したり教えたりしてくださった。おかげで、全員が上達。その後、子どもたちは習得したことを自分の滑りに落とし込む作業に打ち込んでいた。
 師匠がお帰りになった後、別の方に自分から教えを乞い、個人レッスンを受けていた子も。大胆な行動に驚いたが、与えられるのを待つだけでなく自分から求めて動く姿勢を垣間見て、嬉しく思った。















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