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「雪と私」

山村留学指導員 邑上貴厚

 富山県南砺市利賀村にも、冬がやってきた。

 冬は、私の人生において、大きなきっかけをくれた季節だ。長野県で山村留学をしていた私は、白銀の世界というものを初めて体験した。普段は行くことのできない場所でも雪さえ掻(か)き分ければ自由に遊べる...そんな世界に飛び出していけるのが楽しみで仕方がなかった。

 利賀村は、全国でも有数の豪雪地帯だ。昨年は、絶え間なく降り積もり、辺りを埋め尽くしていく雪に圧倒された。一晩明けて玄関の戸を開くと、雪囲いされた軒下に設置された入口は、スコップで掘らないと外へ出ることはできないのである。道路での雪崩も度々発生し、そんな話を聞くたびに、ヒヤヒヤしながら毎日を過ごした。雪に対して明確な恐怖を覚えたのも、昨年が初めてだった。

 今年は冬の体験キャンプの際にクリスマス寒波が訪れ、猛烈な降雪があった。みるみるうちに降り積り、地元の方も「12月のうちにこんなに除雪に出たのは初めてだ。」と語るほどの降り方だった。

 腰まで埋まる深雪と降り続く雪中で、体験キャンプの子どもたちと1日中雪遊びの活動を共にした。「途中で嫌になってしまうだろうか?」とも思ったが、それは杞憂(きゆう)に終わったようだ。私自身ももちろん一緒に楽しんだが、その一方で、「このまま降り続けたら誰もいない我が家はどうなってしまうのだろう?」という不安が頭をよぎった。ありがたいことに、結果としてたくさんの雪が積もった我が家は地域の方に重機を入れていただいたことでことなきを得た。

 子どもの頃は、遊ぶことも、除雪作業をすることも、何をするにもただただ雪は楽しいものだと思っていた。積もれば積もるほど嬉しかったものだ。

 しかし今はそうではない...と思っていた矢先。年が明けて利賀に戻ってくると、春先のような暖かさに加え雨降り模様の天気。「留学生が帰ってくる前にせっかくの雪が消えてしまう!」と降雪を心待ちにする自分がいたのであった。















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