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「真っ暗」
八坂美麻学園
山村留学指導員 吉澤かおり
収穫祭が終わって、二学期最後のセンター生活は、一年の中でも最も日が短い期間である。夕方もあっという間に陽が落ちるので、子どもたちの「行ってきましたー。」が真っ暗な中から聞こえる。
久しぶりに夕方散歩してみた。まだ明るいかなと思って出たが、すぐに暗くなり見えなくなってきた。そのうち一番星が光ってきた。前を見て歩くと暗いが、上を見上げると空は明るかった。昔、暗い中歩くのが怖いと言った学園生に農家の父さんが「暗くなったら上を見ろ。そしたら道が見える。」と言っているのを思い出し、空を再び見上げた。本当に道が見えた。しかしそれでもやっぱり、八坂の道は真っ暗だ。こんなにも真っ暗だったのかと、長い間住んでいても、やはり外に出ないとわからない。久しぶりに自分の体で体験した。暗さだけではない。一番星がきれいなことや、静かだからこそ聞こえてくる色んな音、そして、暗いからこそ何か出てくるかもとドキドキすること。私は特に地面が凍ってきて滑らないか気にしながら歩いたが、とにかく五感を使って色んなことを感じた。学園生もそんなことを考えながら長い道のりを毎日帰ってくるのだろうか。
学園生にとって、この長い通学路を毎日歩くということは、大事なことの一つである。そして、多くの子どもたちが楽しみにしていることの一つでもあり、これまでの修園生たちも一番印象に残っているのもこの通学路である。たくさん歩くから体力もつく、一年通して歩くから四季を感じることができる。夏の暑さや冬の寒さの厳しさもあれば、爽やかな風を感じる瞬間も。必死に歩くから悩んでいたことが空っぽになることも。時には真っ暗な怖さも感じるだろう。
来年八坂の小中学校が一つになる。時代と共に変わることもたくさんあるが、この通学路は変わらない。そしてこれこそが、八坂の魅力の一つだとあらためて感じた。