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「椎の実を食べる」
三瓶こだま学園
山村留学指導員 浅平泰地
山留生の食べ物への情熱は並外れたものがあります。普段から、自由におやつも買ってもらえない環境ですから、野山で得られるおやつへの嗅覚はなかなかのもので、放課後センターの裏山でタラの芽採りをしたり、ある日はポケット一杯に栗を拾ってきたり、キイチゴがなる秘密の場所を知っていたりなど、大人から見ても感心することがしばしばあります。
野山の食べられる植物は、いわゆる山菜と呼ばれるものの他にも、サルナシや栗などの木の実、食べられる野草といったほうがしっくりくるような、オオバコやカラスノエンドウなどまで多岐にわたります。これらはたいていのものなら学園生の誰かが知っていたり、食べてみたことがあったりするものです。ですがドングリに関しては、手軽に食べられることを知っていた子にまだ会ったことがありません。
図鑑や本などでドングリの食べ方を目にすることがありますが大抵が下処理を必要とするものです。大半のドングリは渋みが強く、水にさらすなどの手間がかかります。正直こうしたやり方は面倒でやった試しがありません。ですがシイ類のスダジイ、ツブラジイ、そしてシイ類ではありませんが、マテバシイというドングリたちは、渋みがなくすぐに食べることが出来ます。ある日たまたまこのマテバシイを近所で見つけたので、拾えるだけ拾ってセンターに持って帰りました。そして何人かの学園生に声をかけ、フライパンで炒って食べてみました。ドングリの独特な風味とほんのりとした甘さが絶妙においしく、すぐに大人気になりました。特にうれしかったのは、いかにも山留生らしい学園生だけでなく、まだ都会っ気の抜けない雰囲気の子たちもこの味を気に入り、ドングリがなくなるまで黙々と食べていたことです。
私は福岡出身の母から椎の実を教わりましたが、九州では縁日などで椎の実が売られているそうです。いつか屋台で売られる椎の実も味わってみたいものです。