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「先輩の教え」

山村留学指導員 横山みのり

 私が育てる会の一員としてこの大岡の地に配属されてから、早くも二か月が過ぎた。山々はすっかり紅葉で彩られ、アルプスの雪化粧が冬の気配を感じさせる。思い返せば、私が最初に大岡の地を踏んだのは、まだ暑い七月の初めごろであった。大岡で暮らす子どもたちは、みなとても友好的で、どこか落ち着いた雰囲気を持っているのが印象的であった。そして、彼らの日々の姿から感謝の心や自分の気持ちの伝え方など、人として大切なことを改めて教わることが多く、私はそれに気付くたびに、襟を正される思いであった。

 それからしばらくして、私はアウトドアワークの技術や経験がほとんどないこと、自然に関する知識が少ないこと、そして、「指導員」としての子どもたちとの生活とはなにか等、今の自分はわからないことだらけであることを痛感した。私は「この仕事に関することは、なるべくできるようになろう」と焦りに似た覚悟を持ち、何から始めるべきか先輩の意見を聞こうと、指導者たちに話を聞いて回った。すると、私が尋ねた指導者たちは皆「自分ができることをすればいい」と答えたのである。人それぞれ得意不得意があるのだから、何でもできるようにならずとも、自分ができることを活かしていけばいいと教わったのだ。

 その言葉を受け取った私は、今の自分ができること、自分はここで何を成すのかを改めて考えた。そうして考えてみると、なんてことはない。今の私は一年目の山村留学生と同じなのだ。難しく考えず、今できないことがあるのなら、少しずつできることを増やしていけばいいのだ。何をするにしても、大切なのは何事も子どもたちと一緒になって楽しむことで、身構えず等身大の自分でいればいいのだ。

 それから私は子どもたちとの交流を増やし、センター活動や地域の文化を学び始めた。私が彼らから多くを教わったように、子どもたちに自分の経験を伝えられるよう指導員たちの教えを胸に、子どもたちと真摯に向き合っていきたいと思う。















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