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『思い出し話』

山村留学指導員 持山真

 先日、保護者さんたちと子ども達の話をしていたときに、私が新卒の時のことを思い出しました。正月に地元の小学校の同級生との飲み会をした時に小学校時代に育てる会の活動に参加していた子がいました。

 彼は私立の中学校に進学したため地元を離れていましたが、私が中学から山村留学に行ったことは知っていたようです。

 「どうせ留学するなら海外に行けばいいのに。何で三年間も山村留学なんかに行ったの?あんなの遊んでるだけなのに何の学びがあるの?」あまりにも失礼な質問で驚いて、その時には「遊んでいただけではないし今の私があるのはあの三年間があるからだ」と言うくらいしか言い返せませんでした。彼は何年か海外留学を経験したのちに現地で就職をして、正月に一時帰国していたようです。日本より海外が素晴らしく、日本に留まる意味が分からない。というようなことを悪びれず言っていました。人の経験にケチをつけるのは失礼だよ、とほかの友人たちに諭されても、周りの嫌な空気にも気づけていないようでした。

 海外留学は素晴らしい経験だと思うし、きっと彼は良い経験を積んだのでしょう。でも、どうしても彼の発言は薄っぺらく感じてしまうのです。

 私は山村留学での体験を通して、母国である日本の古き良き習慣や文化を学びました。自分の母国について知らずに海外に行くより、母国を知ってから海外に行くほうが、比較対象がはっきりして、きっとより深い学びを得られるのではないかと思います。

 今の学園生には、自分の故郷を語れるような人になってほしいという思いで向き合っています。

 もし、将来この子どもたちが海外留学をしたとしたら、きっとあの彼よりももっと学びを深められるだろうと確信しています。
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