トップ > 指導者だより > 自分の足で行って、帰ってくる

指導者だより

« 「山村留学の果実」 | メイン | 「時代にぶれない教育」 »

自分の足で行って、帰ってくる

山村留学指導員 山本 将寛

 五月下旬、利賀村にそびえる金剛堂山の山開きを迎えた。登りやすく、景色も良く、さらに職員宿舎から十五分ほどで行ける身近な山であるため、正式に山が開くこの時期は心が躍る。早速、今年一本目の登山へ。山に入ると、頭上に覆いかぶさる木々、そこから漏れる日差し、ひんやりした空気を体全身で感じ、また、すれ違う登山者との何気ない会話の楽しさから、「山ならではのこの感じ、やっぱりいいなぁ」「今年も始まったなぁ」という感覚になった。

 私が登山に惹(ひ)かれる要因は、下りの斜面と自由さにある。登山中に走ってみるのだが、下りを走るときの疾走感、どこに足を置いたら転ばず、楽に走れるかを考える楽しさは他の何物にも代えられない。その気持ちの良さに、走りながら叫んでしまうことも。また、走っていても「おっ...?」と心動いたものに足を止めて、見たり触ったりしてみる。そこに広がる景色を眺めたり、川に足を突っ込んでみたり、岩壁から流れる水で頭を洗ったりと自由気ままにその瞬間、その場を味わっている。こういうわけで山に足を運んでしまう。
 山に入るときには「自分の足で行って、帰ってくる」という言葉を大切にしている。動物との遭遇や怪我・体調不良などの危険に遭遇したとしても自力で帰ってくる、という意味である。軽装、単独で山を走ることは通常の登山よりも危険が伴うことは言うまでもないが、それでもそのスタイルを選択する以上、何があっても自己責任になる。だからこそ、自分の足で帰る、という責任と覚悟を持つよう頭に刻んでいる。
 今年度、センター活動として二度の登山を予定している。慣れない子には大変なこともあるだろうが、それでも山に導かれるほどの魅力が登山には多くあることを知ってほしい。自分の楽しみ方を伝えてみたり、登山中に留学生が興味を持ったものに寄り添ってみたり、景色を一緒に眺めたりして、留学生一人ひとりが心動かされるものと出会い、それぞれに魅力を感じられる登山活動にしていきたい。















©SODATERUKAI All rights reserved.