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四十期スタート

山村留学指導員 戸田佐和子

 四月五日、四十期生十名が学園に集合し入園のつどいを行えた。しかし、翌日から数日の間に、山村留学生活を続けることに二の足を踏んでしまった子が一名。結局、退園という道を選んだため、早々に学園生は九人に。

 波乱の幕開けとなったが、その後、心配された退園云々(うんぬん)の影響は殆(ほとん)どなく、曲がりなりにも九名での集団生活や活動を築いていっている。

 これまでに入園直後の退園が全くなかったわけではないが、今回対処する中で、山留生に対する自分の認識を改める必要に気づかされた。入園選考の難しさを痛感したのは勿論(もちろん)だが、一歩踏み出せた彼女に迷いを生じさせてしまった理由は何だったのか...。単純ではなく複合的な要因が絡んでいたのだろうが、もう一歩を踏み出す勇気が湧く様な言葉をかけたり、後押ししたりできず、自分の力不足を悔やんだ。しかし、「帰る」の一点張りになり、梃子(てこ)でも動かなくなった子を説得できるのは保護者や指導員ではなく、同じ立場の山留生だと考えた。葛藤する子の状況を説明し、皆の力を借りたいと相談したところ、女子五名が彼女に働きかけることに快く賛同。

 船出をしたばかりでまだお互いよく知らない関係。自分の心細さを隠して、相手の心情を察し、一生懸命言葉を紡ぐ姿に心を打たれた。新入園生は、家族とのしばしの別れの淋(さび)しさや新しい環境に対する不安など共感できる胸のうちと、これからへの期待感。それらは皆抱えているものだから、一緒に頑張ろうと。継続生は、自身の経験を交えながら慎重に選んだ励ましの言葉を。さらに、声が届かないなら寄せ書きを...と、それぞれ思いを込めて書き、渡していた。

 残念ながら力及ばずの結果にはなったが、複雑な心境でありながらも他者に寄り添える優しさや強さを併せ持つ子らに頼もしさを感じた。大変な決心と覚悟をし、一歩踏み出す勇気をもってやってきたから躊躇(ちゅうちょ)しないのは当然という思い込みを捨て、山留生への敬意を心に留めて関わっていきたい。















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