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守破離

山村留学指導員 高木 陽光

 時間が経つのは年々早くなっているように感じる。昨年の四月に始まった学園生活はもうすぐ区切りを迎える。早いと言っても子どもにとっての一年間は長いもの。様々な体験の中からどのようなものを吸収できただろうか。

 自分が売木に山村留学をしていた頃、教頭先生が守破離(しゅはり)の話をされたことが強く印象に残っている。「守り尽くして破るとも離るるとても、本を忘るな」要するに、基本の型を忠実に守り、自分に落とし込むことが完了する。そうすると自分にあった方法や考え方が見つかり、基本の型を破ることができるようになる。自分ならではの型を身につけ、さらに研究、探求を続けると終には型から離れて新しい型や違う世界で活躍することが出来る、というものだ。
 中学生だった当時、この話を真剣に聞いていた訳でも、何か大きな変化があった訳でもない。ただ一つの種を植え付けられたに過ぎない。しかし、この考えは大人になってから後悔と言う形で、頭の中に棲(す)みついている。小さい頃から、基本や基礎を軽視していた自分は、気付いたら出来るようになっていたことが多く、なぜできるようになったかを分析しなかったのだ。また小器用だったため、ちょっとしたことであれば、すんなりこなしてしまうことも少なくなかった。守から破に辿(たど)り着くためには、基本を完璧に踏襲する必要があるが、自分は基本、そして基本の身につけ方まで知らないまま成長した。型破りな人に憧れ、模倣だけをし続けた結果、形無しになってしまったと感じる。ただ守破離を知らなければ、自分を分析することもなかっただろう。
 そんな話をひょんなことから学園生にする機会があった。「だからこそ基本を大事にするんだよ」と。もちろん、今すぐに行動に移るほど焦る必要もないし、焦りを感じることもないだろう。時間が経つのは成長ともに早く感じるようになる上、後悔だけはしてほしくない。自分もかの教頭先生のように種を植えることは出来ただろうか。















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