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皆にも一から体験を!

山村留学指導員 戸田佐和子

 年末年始を実家で過ごした学園生たちの帰園前日、ラジオから聞こえてきたあるニュース。どこかは聞きとれなかったが、四百年以上の歴史を持つ伝統の和紙の「初すき(今年初めての紙すき)」が行われたそう。その地の自然豊かな山で採れた楮(こうぞ)の木と湧き水を使って作られるその和紙は、きめが細かく丈夫なのだという様な内容だった。

 前々から学園生たちに和紙作りを体験させたいと思い、収穫祭後に少し着手していたから、その情報に後押しされた様な気持ちにもなり、完遂させたいという思いを強くした。収穫祭で発表した個人体験で、紙作りに挑戦した子を間近に見て、紙をすくところだけはしたことがあると話す他の子たちにも是非、一部分だけではなく一から体験する機会を与えたいと思った。自分で作った手すき和紙の卒業証書の話題も時折耳にするし、私も他学園で修園賞用に、曲がりなりにも和紙をすいたことがある。楮と並んで和紙の原料となる三椏(みつまた)が学園近くに生えていることに気づき、いつか売木でも...と温めていたのだった。
 和紙作りは冬仕事と言われている。原料を処理する工程を初冬に実施することを決め、伐採許可を得てから皆で三椏の木を収穫しに出かけた。見て、その枝が必ず三つに分かれていることが三椏の名前の由来であることを確認し納得した子どもたち。切って持ち帰る際、蕾(つぼみ)の香りを吸い込んだり、皮と芯にわけるために枝を煮る工程で発する匂いを嗅いだり。想像以上にするっと気持ちよく皮が剥がれる感触や黒皮を剥ぐ楽しさを味わい、水にさらした後、干した白皮を細く切り揃(そろ)える作業など和気藹々(わきあいあい)とできた。先に個人で体験した子を先生役に、子ども同士で教え合う姿も微笑ましかった。
 冬本番。冬ならではの雪遊びやスキー・スケートのみならず、和紙作りの続きの、原料を加工する工程や紙すきも、全員に体験させて修園を迎えたいと思う。















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