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「シマヘビ日記」

山村留学指導員 山本将寛

 九月半ば、センターの一室から「ヘビがいます!」という声が聞こえてきた。慌てて駆けつけ、捕獲。そして、臨時のシェルターを作り、観察。捕まえたときは「焼いて食べましょうよ」と楽しく指導員間で話していたものの、すっとした顔つきにぽつんとした眼、とぐろを巻き、舌をチョロチョロと出す姿を見ていると「食べたい」から「飼いたい」に、いつしか心変わりしていた。この日からセンターの新しい仲間となった。

 当面の間、留学生Aと一緒に飼育することが決まり、Aは「シマ」と仮名を付けた。シマを捕獲した時期は野生生物が冬眠する手前の時期なので、現在は餌の確保に頭を抱えている。カエルでの餌やりは何度か成功しているが、市販の冷凍マウスではうまくいっていない。このままでは捕まえたカエルは底を突き、野生のカエルたちは冬眠して捕獲できず、餌が与えられなくなる。この餌問題を解決しなければシマと一緒に生活する未来はない。
 シマと出会った留学生たちの初めての餌やりでは、その瞬間をじっと見守り、日々の中では「ヘビ見てもいいですか?」と事務室を訪ね、「カエル捕まえておいたよ」と報告してくれる。多くの留学生がシマの飼育を気に掛けている。その中でもAは、少しずつ飼育に対する責任を持ち始めているように見える。「餌どうしようか......?」と考え、シーツ(床材)や水を定期的に変え、ほぼ毎日シマを見つめている。基本的なことではあるが、Aがシマのことを想って行動している姿である。
 私はシマだけでなくカエルの飼育環境を考えたり、毎日シマを眺めて癒されたりと飼育にはまっている。初めて餌を食べたときの感動と達成感、Aと2人で目を合わせて「やっと食べたね!」と安心したあの瞬間は忘れられない。
 思いつきで飼うこととなったシマ。今は生きてもらうことに必死だが、時機を見てAとこの飼育の機会を見直し、シマを飼育していくことの価値・意味そして命を預かる責任について考えていく。















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