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「See & Look」

山村留学指導員 主代望都

 気がつけばあっという間に五月も過ぎ、いよいよ梅雨に入ろうとしている。子どもたちはすっかり英語村の生活にも慣れてきた。日々の積み重ねが着実に子どもたちの中に浸透し、習慣となっていくのを肌で感じる毎日だ。

 今年に入って私は、自分の身の回りの変化にある日突然気づき、驚くことが多くなったように感じた。それは例えば道端から匂い立つ花の香りだったり、ふとした時に耳に入る鳥の鳴き声だったりしたのだが、その度に私は自分の認識と現実との間にギャップを感じて戸惑ってしまった。
 それはつまり、私が身の回りの変化を見落としているということだと思ったからだ。これだけ自然に囲まれた環境の中でずっと過ごしているというのに......、と少々へこみもした。
 そこまで考えたところで、では今までは逆にそのような変化にここまで敏感に反応していたのだろうか、と疑問に思った。これまでの三年間を振り返ってよくよく考えてみると、意外とそうでもなかったかもしれない、という結論に至った。
 今までの私は、周りの変化が目に入ろうが、耳に入ろうが、大して気に留めていなかった。気に留めていなかったというより、さして心を動かされていなかったというのが正しいかもしれない。認識はしているが、そこに注意を向けるだけの興味関心、感性、知識がなかったように思う。
 子どもたちと四年間を過ごすうちに、自分の興味や視点、感覚が、彼らに感化されたのかもしれない。その結果、身の回りの変化に心が動かされるようになったのではないだろうか。
 英語のSeeとLookという単語は、日本ではしばしば「見る」と訳されるが、意味が少々異なる。Seeは「意識しなくても視界に入ってくる状態」で、Lookは「意識して見ること」であるという。今、私は自分の状態、態度がSeeからLookに移行しようとしているのだと感じる。そしてそれこそが山村留学生である子どもたちの目線なのだろうと思うのだ。















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