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遠回り

山村留学指導員 有坂亮祐

 大川村のブログは毎日更新している。以前は不定期更新で、週に一回あるかないかという頻度だった。ブログに対して、思い入れもなく、読んでくれている人の顔を想像して書くことなどなかった。
 しかし、留学生の保護者からは「いつも、ブログを上げてくださりありがとうございます」と、言われることが多かった。大したことをしていないのに、勘違いした高揚感が生まれたときもある。

 そんな中、留学生の祖父母から「孫の顔をブログで見ることが、今の私たちの生きがいです」と、言われることがあった。このとき初めて、ブログに対しての責任感が生まれた。その日を境に、ブログの更新頻度を大幅に増やすことになる。今まで、留学のブログを見てくれている保護者の気持ちを深く考えたことはなかった。
 「私たちの生きがい」。その言葉の重みをかみしめながら毎日上げた。続けることがしんどくなる日も、その言葉で踏ん張れた。
 学期の最後、留学生帰省のためにセンターに訪れた保護者の方から、「ブログをたくさん上げてくださってありがとうございます!」と、言われた。お礼を言うのは私の方だ。毎日ブログを読んでくれているのだから。
 いつの間にか、読んでくれている人の顔を考えながら記事を書くようになっていた。ブログを通して、保護者の顔をイメージできるようになったことで、留学生に対しての接し方、体験活動の運び方など、子どもはどんなことをやりたいのか、保護者は子どもにどんなことを望んでいるのかを深く考えるようになった。気づくと、人に喜んでもらえることが、何よりも大切なのではないかと感じた。
 仕事とは、誰かのために自分の労力や時間をかけること。その末に人に喜んでもらえることが、何よりも大切なことなのだ。遠回りに遠回りを重ね、ようやくスタートラインに立てた気がする。留学生のため、大川村のため、誰かのために仕事をしたいというエネルギーが、体の中を満たしていく。















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