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「足元を見つめて」

山村留学指導員 赤坂隆宏

 コロナ禍で、今期自分に起きたプラスの変化の一つを書こうと思う。それは、「蝶」に夢中になったこと。今年、特別蝶がたくさん飛んでいたというわけではない。幼少期も宮城の田園地帯で育ち40歳を過ぎたこれまでも、蝶を特に目にしてこなかったわけでもない。
 今年はとにかく蝶が気になり、図鑑を読みあさり、捕虫網を持って追いかけ、展翅して標本箱へ納めた。さらに、採集家の方のご指導を仰ぎ、食草を手に入れては周辺に移植し、集まる樹液や求める蜜の植物を調べて野山を探し歩き、見つけると網を持ってドキドキしながら待ち構え、人目を憚(はばか)らず子どもと共に網を振った。

 いつしか、蝶が飛ぶ天候や気温、種類的に飛び回る時期に気付き、幼虫探し、飼育して羽化させることまでのめり込み、里山を眺めれば視界を飛び交うものすべてが蝶かと錯覚し気になり出すほど。
 長年過ごしてきたこの周辺に、何十種類もの飛び交う蝶の存在が見えていなかったことが不思議に思えるほど、興味関心を持ち意識することが、これほどまでに景色を色づかせ、日常をメリハリあるものに変えてしまうものなのかど体感したのであった。
 きっかけは、やはりコロナ禍で移動が制限され、足元の自然に目を向ける時間ができたこと。自分の七歳と五歳の息子と、レジャーには行けない今年は何をしようと考えていた矢先、息子が庭で捕まえた蝶を持ってきて、一緒にじっくりと観察し始めたところ、光の当たり具合で変化する鱗粉の輝きを素直に「美しい」と感じ、自然界の宝石集めのような感覚で標本作りにのめり込んだ。海を渡るアサギマダラや海外の蝶にも関心が広がり......。まずは、雪が解け蝶が舞う春が待ち遠しい。
 視点を変えて新たな楽しみを見出し、発見や気づきを得、プラスの転換キーを持つこと。じっくりと足元を見つめること。コロナ禍で気づいた原点回帰であった。















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