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失敗経験

山村留学指導員 有坂亮祐

 木々の葉っぱが、いつの間にか無くなり、赤かった山々に茶色の部分が増え始めている。ここ最近は暖かく、冬のおとずれなど感じなかったが、木々はすでに冬の準備を終えようとしていた。
 大川村では、小中学校の学習発表会や村の文化祭が終わった。しかし、部活の大会やマラソン大会が残っている。留学生にとって、年末よりも十一月中旬からの行事ラッシュのほうがよっぽど忙しいのかもしれない。

 毎週、何かしらの行事が終わっていき、留学生の肩の荷も少しずつ下りているようだ。
 大きな行事の後は、とにかく気が緩みやすい。村の文化祭は学習発表会の翌日だった。毎年留学生はそこで太鼓の発表をしている。今年も、おおとりを務めさせてもらえたが、期待にそう発表とはならなかった。三宅島太鼓を三人一組で回し、二巡叩く予定だったが、途中で下打ちが消え、一巡で終わってしまったのだ。
 留学生は舞台上で戸惑いを隠せず、無理やり三宅島太鼓を終わらせたのだった。他の演目は大きなミスはなかったが、三宅島太鼓のミスがあまりにも痛く、発表が終わった後「やってしまった......」と悔しさをにじませていた。今年の文化祭は失敗体験に終わった。
 失敗体験を嫌う人はたくさんいるが、私はそうは思わない。失敗をしてしまうことでしか気づけないことは多く、その中には非常に大切なことが眠っている。失敗をせずにうまくいった人よりも失敗を繰り返してうまくいった人のほうが、経験に深みが生まれる。
 子どもたちが公の場に立って何かを発表するとき、成功してほしいという気持ちは勿論あるが、その発表を経て子どもたちが何かを感じ取ることの方がよっぽど重要に思う。成功しなければならない、なんてことはないのではないだろうか。
 文化祭後の振り返りで、子どもたちも三宅での失敗を大きなものとして捉えていた。失敗した経験が次につながるように、留学生に指導していきたい。















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