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「歩み寄るということ」
三瓶こだま学園
山村留学指導員 邑上貴厚
大田市山村留学センターでは、11月14日の収穫祭以降、3月の修園の集いを迎えるまでの約4ヶ月間、地元の神楽団に教えていただきながら、「石見神楽」を体験することができる。地域の伝統文化の本物に触れられる貴重な体験である。
しかしこの体験は必ずやるという活動にはしていない。子どもたちの希望を聞き、全員の希望があってはじめて、活動がスタートする。
今年度も神楽体験の活動を行うかどうかを決める話し合いが、行われた。この活動は、週2回平日夜の時間を使って行われる。そのため、全員が一様に「やりたい!」と満場一致で決まったわけではなかった。
その時、問題となるのが、「このまま多数決ではいけない。」ということである。
全員の意見が一致しなければいけないというのは前述した通りであるが、それ以上に全員が意思統一を図ってはじめて、決して楽ではない練習や生活に、積極的に取り組むことができるからだ。
「修園に向けて個人でやりたいことがまだたくさん残っている。神楽ではなく、そこに時間を費やしたい。」
そういった理由で、神楽をやらないという選択をした者たちは、互いの意見を交換したのち、大多数の意見を尊重したのだった。
結果としては、多数派の意見に軍配が上がったわけだが、その裏には重要な事柄が含まれている。それは、「多数派を尊重した少数派の思いも、反映されなければいけない。」ということだ。
なぜなら、現状では少数派が多数派に歩み寄っただけ、だからである。
こうした話し合いの中では、どうしても少数派が多数派の意見を尊重するだけになってしまうことは往々にして起こり得る。これは学園社会のみならず、一般社会でも同じことだろう。
学園の子どもたちが、これからこの課題にどのように立ち向かっていくか、楽しみである。