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個人体験の時間

山村留学指導員 高木陽光

 コロナ禍での収穫祭が無事に終わり、慌ただしかったセンターでの生活が元に戻った。太鼓や民舞、行ってきた農事の発表など、様々な内容がある中、学園生が、おそらく一番時間をかけたものが、個人体験発表に関することだろう。

 学園生一人ひとりが、それぞれ好きなテーマを決めて、観察や研究、工作をし、そこで得た感想や気付きをまとめて発表する。そのため、収穫祭が近づくと週末の活動に代わって、個人体験発表を準備するための時間となる。この時間を使って、村の人に話を伺ったり、何かを作ったりした。
 初めは、特に具体的な目標が決まっていない中で、いきなり漠然とした時間を与えられ、なんとなく一日を過ごしたり、ほかの子のテーマに首を突っ込んで一緒に行動したりと、かなり余裕がありそうだったのは束の間、準備しなければいけないことに追われるようになっていった。
 自分が学園生だった頃も、収穫祭当日の朝まで発表用の原稿を作っていたり、模造紙に書き込んでいたりと大変な事が多かったイメージがある。とは言え、個人体験を進めている間は、他では経験した事の無い充実感を得ることが出来た。
 普段の生活であれば、休日に一人で過ごすことなど、たいした事ではないはずである。個人の時間を充てられることが少ない山村留学の中で、一人で村の中を歩き回ったり、何かに没頭したりしたことが、特別なものだったと記憶している。あの時見た景色や、匂い、雰囲気がものすごく心地良く、いまだに鮮明に覚えている。
 学園生たちも、きっと記憶に残る体験をしたに違いない。
 収穫祭が終わった直後の今、どんな事を覚えている? と聞いても、まだ様々な記憶が残っているだろうがそのうちに、あの時間そのものが、特別な記憶になっていたと気付くはずだ。















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