トップ > 指導者だより > 「山留生に学ぶ」

指導者だより

« 「新入園指導員」 | メイン | 「劇"埋没"」 »

「山留生に学ぶ」

山村留学指導員 今野利彦

 私が英語村に勤めてから半年が経つ。倉渕での生活は刺激的だ。
 昨年、私はカナダのバンクーバーに滞在していた。そこは都心を少し離れると大自然が広がっている。しかし、その頃は自然への興味関心がなく、数回のハイキングをしたくらい。
 倉渕に来てからは、アウトドア漬けの生活をしている。山登り、クライミング、山菜採り、川遊びなど毎日が冒険である。アウトドアへの挑戦をするようになったのは子どもたちによる影響が大きい。

 ある朝、登校中に男の子が私のところにある実を持ってきた。実の中には透明なものに覆われた黒い粒々。まるで蛙の卵のように見えた。それを「これ食べてみて!」と満面の笑みで渡してきた。
 得体の知れないものを食べる勇気がなく「食べられるの? 食べてみて?」と、先に食べるよう勧めた。彼は美味しそうにその実を頬張った。食べられるものだと確信した後、私も恐る恐るその実を食べてみた。甘くて美味しい。「あけびっていう果物なんだ! 見た目は気持ち悪いけど美味しいでしょ!」。些細な事だが、この出来事は私が自然に興味を持つきっかけとなった。
 英語村では朝の集いに"Nature Talk"がある。指導員が子どもたちに自然を紹介し、興味関心を高めることが目的である。私は指導員という立場でありながら、子どもに心を掻き立てられてた。まさにこれが"Nature Talk"だと彼から学ばせてもらった。多くは語らず、聞き手の五感を刺激し、心を掻き立てる。私も彼のような"Nature Talk"ができるようになりたいと心から思った。
 英語村の子どもたちの自然に対する興味関心はとても高い。そして知識も豊富だ。子どもたちと接していると新たな発見が沢山ある。本当の意味での指導員とは子どもたちなのかもしれない。
 大人が普段見過ごしがちなことも彼らの目には、しっかりと見えている。日々の生活を共にしてそう感じる。これからも子どもたちから何を学べるのか楽しみだ。















©SODATERUKAI All rights reserved.