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「劇"埋没"」
大川村ふるさと留学
山村留学指導員 有坂亮祐
毎朝、「朝のつどい」で外に出ることに抵抗が出てきた。朝の外気は五度を下回る予報が出る日が増えてきている。
この前、留学生と「埋没」という公演を見てきた。これは早明浦(さめうら)ダム建設計画が持ち上がったときの大川村の様子を劇にしたものだ。
概ね、村史に書いてあった内容通りだったが、実際に劇になったものを見るとすんなり入ってくる。活字を読むのにはエネルギーが必要だが、劇としてならたくさんのエネルギーは必要ない。留学生の何人かは真剣に見ていた。大川村の人口減少は"作られた過疎"と呼ばれている。早明浦ダム建設のために、住居を移さざるを得なくなった人たちがいるのだ。香川県や徳島県など、吉野川の下流地域で水害を抑えるために、川上の大川村の一部がダムの底に沈んだ。それが「埋没」の話の幹。
私は大川村の歴史を一度勉強したので、すんなりと劇の内容が入ってきたが、ダムによる大川村の被害や、そのことについて説明する言葉が少し難しかったような気がした。そもそも、子ども向けに作られたものではないので、それは当たり前かもしれない。ただそれでも、大川村の昔話を劇にしてくれたことで、留学生が大川村について、深く知るきっかけができたことは間違いない。真剣に聞いていた子は、かなりの情報量を吸収できたのではないだろうか。
私は大川村の抱えた問題、歴史を知るのに、分厚い村史を読む必要があった。人に聞いても良かったのだが、人から聞いた話というのは右から左に抜けやすい。自分が得ようとした情報は、文化や歴史やその当時の人々の気持ちを深く掘っていくことなるだろう。子どもたちにとって、本を読むよりも簡単で、話を聞くよりも印象に残りやすい、劇という形になったのは、村の歴史を知ることへのとっつきにくさを一気に引き下げたに違いない。
この埋没の劇が、留学生のみならず、他の方に、大川村のことを知ってもらえるきっかけになることを願う。