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生きものの世話を通して
山村留学売木学園
山村留学指導員 戸田佐和子
ある日の夕方、玄関から「今日のヤギ当番、誰? ヤギが小屋にいないのに何に餌やったの?」という職員の呆れた様な声が。
数年前から学園で飼っているヤギの世話を、センター生活中は学園生が当番で行っている。朝の餌やり・水かえとセンターを一周だけの散歩、調理で出た野菜くずや果物の皮などを夕方にやることだ。
以前は当番でなくても自主的に、道端の草や木の葉を食べさせながら運動させるため長めの散歩に連れ出す子たちもいたのだが......。今は、大きくなったヤギが手に負えなくなり、恐れたり、どちらが散歩されているのかわからない状態になったりするので積極的に世話をしない子が増えた。
それにしても夕方、もぬけの殻の小屋に餌を置いてくるとは。その時ヤギは、日中から除草効果を期待され学園の敷地内で草を食んでおり、小屋に戻し忘れられていたのだ。ヤギの姿を確認せず見もせず、当番だから機械的に箱に餌を入れておしまい。通り一遍の関わり方は、今に始まったことではなく、実家で生きものを飼っていたという子でさえそうだ。
否応なしに世話をさせられていると思っている子もいるのかもしれない。ヤギは現学園生よりも前から学園にいて、日々の小屋掃除や食糧集め・農家生活中の世話や散歩は、気づいた職員が担当する変則的な飼育なので、無理もない。
それでも、生きものを飼うことが子どもに与える影響は大きく、大切なことを学べると信じて疑わない。命の尊さはもちろんのこと命を預かっているという責任感、心の支えや癒しになったり、豊かな感情を育んだり。ひいては他者のことを思いやる心が芽生え、円滑にコミュニケーションをとれるようにもなり、山留生活に寄与する部分もあるように感じる。
秋が深まり、収穫祭の準備と並行してヤギの冬の餌の確保にも忙しい学園生。干して保存するため、好物の葉を数回にわたり集めたが、ひたむきに取り組む姿があった。