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『家族とライバル』
三瓶こだま学園
山村留学指導員 水落碧衣
今年度の留学生活が始まって半年が経過した。最初は血のつながりがない人たちと同じ屋根の下で暮らすことに慣れず、子ども同士がぎこちなくやりとりをしていたが、今は楽しく食卓を囲み、一緒に活動にチャレンジする姿も見られるようになった。
同年代の人が集団で生活していると、意識してしまうのが、学年の近い者同士の関わり合いだ。最初は友達として仲良く遊んでいたのが、数か月経過して相手の性格や能力がわかるようになると、自分より優(まさ)っている部分がやたらと目立って見えてしまい、「自分も負けたくない」と闘志を燃やす、ライバルとしての関係が現れてくる。
しかし、センターの活動は集団生活なので、協力してやらなければならないことがたくさんある。ライバルとして勝負をしていたとしても、その時は家族として手を取り合わなければならないのだが、実際はうまくいかない。
「私はあなたと違って上手にできるもの」と無駄に強調してみせたり、相手のミスに対して「あなたがやらなかったからでしょ? だから私は手伝わない!」と言ってしまったり。素直になれず険悪(けんあく)な雰囲気になってしまうこともある。
宿題、食事のスピード、整理整頓、忘れ物......。すべての事柄において相手と比べて一喜一憂する様子は、自分も経験してきたからとても共感できる。しかし、相手を陥(おとしい)れることで得られる「自分は上にいる」という感情は、実際相手のいる場所を自分に引き寄せただけであり、自分自身は何も変化していない。
本当に自分がレベルアップしたいのであれば、まずは競争している相手への固執(こしつ)を弱めて自分自身と向き合い、時には自分と戦う必要があると私は考えている。そうすることで自分の本質が見えるようになると、相手の本質を認めることができる。
尊重しあうことで、まさに家族になれると思っている。今後、子どもたちの関係がどのように変化するのか楽しみだ。