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収穫祭にむけての時間

山村留学指導員 高木陽光

 10月に入ると、気温も下がり朝はかなりの冷え込みになる。秋が深まっていくこの時期から、学園生は本格的に収穫祭、そして学校文化祭の白樺祭に取り組んでいる。
 収穫祭では、個人でテーマを決めて、追求、研究をしていくものがある。生き物や工作、村の風土に焦点を当てて、それぞれが創意工夫をしている。

 自分も山村留学生当時そのうちの一人だった。学園生の時は3年間、3回分の個人研究発表の機会があったのだが、自然や生き物に興味が持てなかった自分は、なかなかテーマが決まらなかった。指導員に様々なアドバイスをもらい、昔から好きで履いていた下駄をヒントに、売木村で歩きやすい下駄づくりというアイディアをひねりだした。
 当時売木村には、木工細工を得意とした氏原さんという方がおり、お話を伺ったり、加工機材を貸していただいたりした。そこで、当時のデザインを聞いて作ったり、歯が8本もある下駄を実際に作ったりして、村内を歩き回ってみた。
 結果はよく覚えていないが、自然の中を一人で歩き回ったことは、言い表せようの無い素晴らしい体験だった。歩いているとだんだんと暑くなってくるが、それをサーっと冷ます秋風。紅葉が進み、ステンドグラスの様だった木々の葉。
 あの時に見た景色は、いまだに鮮明に覚えている。秋が好きになったのも、きっとこの体験があったからだと思う。
 学園生の中にも、村の人に話を聞きに行ったり、木の実を集めたりしている子がいる。見回りで見に行くことはするが、口出ししたりはしない。誰にも邪魔されない、自分のためだけの時間を今、子ども達は過ごしている。
 収穫祭に体験発表はするが、もちろん体験した時間を全て発表するわけではない。自分の様に、何かに出力する機会が無い限り、本人にしかわかり得ない経験。特別なことをしているわけでは無いが、きっと本人たちには思い出深い物になっているに違いない。















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