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「留学生に弟子入り志願」

山村留学指導員 今野公彦

 待ちに待った六月、いよいよ長い自粛生活が緩和され、まだ油断はできないが、心は自然と外の世界に向かう。さあ、どこで何をしよう。
 私は子どもたちの体験談に耳を傾けることが大好きだ。子どもたちの体験談には、効果音、感情、感覚などがたっぷり入っていて想像力を掻き立てられる。そして、今すぐにでもその世界に飛び込みたくなる。

 ある日、一人の留学生が釣りの話をしてくれた。「釣りは面白いよ。ザザーッと流れる川、ヌルヌルした石や大きな岩をピョンピョン飛び越える。忍者みたいにそーっとそーっと、魚に気付かれないようにね。竿を投げる時は、木の枝に注意! シュッて仕掛けを入れるんだ。ヨッシャ! 上手く入った!。でも今日は一匹も釣れなかった。悔しい。明日は本気出す。絶対釣る。あ、週末のキャンプ活動には、そうちゃん(私の息子)は来る?」
「そうちゃんも魚見たいと思うから一緒に行くよ」と約束した。
 キャンプ当日、彼は自分で起こした火で、釣ってきた岩魚の塩焼きをそうちゃんにあげた。一歳半のそうちゃんは立派な岩魚を完食。「また釣ってあげるから、遊びに来てね」と満足そうな留学生。
 彼の優しさと逞しさに成長を感じて嬉しさがこみ上げる。と同時に何とも言えない悔しさが心に残る。市内のスーパーの魚を食べさせる私、釣ってきた魚を振舞う彼。言葉にするのは難しいけど、その差は大きい。そして、最後に釣りをしたのは五年前だとふと思い出す。もう、餌の仕掛けの付け方も忘れてしまった。
 「弟子入りしたい。岩魚を釣りたいんだ」。彼にお願いした。
 彼の体験談から、次の目標が決まった。岩魚を釣ることだ。















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