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指導者だより

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山村留学指導員 有坂亮祐

 少年時代の思い出とはなんだろう。学校の友達と修学旅行や移動教室で楽しく過ごしたことだろうか。はたまた、誕生日プレゼントを買ってもらったことだろうか。
 当時はそういった楽しそうなイベントが心待ちだった。しかし、今になって振り返ってみると思い出すのは、なんの変哲もない、ただの平凡な日々が先に頭に浮かんでくる。

 去年の今頃、「一年の終わりに貰える修寮賞ってどうしてるの?」と、留学生に聞いたときに、「どこかにいきました」という回答が返ってきた。話を聞く限りでは修寮することに関心がなかったようで、とても悔しい思いをしたことを覚えている。
 年度が替わる前から、村では紙の原料を作っていたことを知っていて、それを留学の活動にしようとぼんやりと考えていたのが、悔しさに突き動かされて形になってゆく。
 修寮賞を自分たちで作る、という活動を立案した当初は、人に笑われるか否定されるかのどちらかで相手にされなかった。しかし不思議なもので、和紙を作るための勉強を始めると今まで興味を抱いていなかった人も手伝ってくれるようになった。それまで一切興味のなかった留学生も興味を示し始める。中には手伝ってくれたり、次へのヒントをくれたりする人もいた。
 今まで興味がなかった人が興味を示すようになったのは、人が何かに真剣に取り組んでいる様を見たからだと思う。そこで他人に認められたことは、修寮賞を作る過程で得た副産物にすぎない。けれど、無事に和紙を漉くことができた後には、一つの活動を終わらせたという事実ではなく、そこに至るまでの道のりが大切だったと感じるのではないだろうか。
 数年後、子どもたちが留学していたことを思い出すときは、きっと楽しかった活動の一つではなくて、何事もない普段の生活だと思う。修寮賞が、懐かしい日々を思い出すためのきっかけになってくれればと思う。















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