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マジカルバナナ♪

山村留学指導員 高木陽光

 三学期に入りスキー活動が始まった。スキーを経験したことがない学園生も、回数を重ねていくうちに道具の名前や滑り方などを覚えていく。荷重・抜重やバックル、ビンディングなどの専門用語も最初は理解できずとも、何度も耳にすることで段々と理解していった。

 人間、一度覚えてしまえばそう簡単に忘れない。様々なスタイルのスキー板が世に出ているが、スキー板と、あの黄色くて甘いバナナを間違える人はいないだろう。
 それは「スキー板ってこんな感じの物」という概念が頭の中に記録されているからである。簡単に言えば「バナナといえば?」「黄色」といった具合で、まさにマジカルバナナである。子どもたちは、様々な物事を覚えていくうちに共通部分を抜き出し、概念を形成する。
 一方で、人や環境に左右される部分が大きく、曖昧なものが観念だ。世間の常識として蔓延している内容の物の多くは、触れづらい傾向がある。故に、マジカルバナナの様に、他人と照らし合わせることが難しい。
 しかしながら、人は色々な環境で「善いこと」「悪いこと」等、道徳観や倫理観などの観念と向き合うことが必要になってくる。主観的要素からなる観念の全ては「間違いではない」が、行き過ぎたものやそもそも知らないというのは多少生活を窮屈にすることがある。
 少しずつでも他人や世間の観念を知り、それを精錬していくことにより、TPOをわきまえられる様になったり、所謂人としての成長につながったりする。
 学園生はこの一年で本当にたくさんの経験をした。体験活動はもちろんだが何より、一年間同じ子と同じ釜の飯を食う集団生活の経験だ。衝突や、いざこざもあった分、それのおかげで尖っていたものは丸く、くすんでいたものは輝き出したかもしれない。ここで得たものは一生モノになる。学園生はいつか、この経験のパワーの凄まじさに気づくだろう。















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