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「それだけで充分」

山村留学指導員 赤坂隆宏

 今冬、例年にない「雪不足」に見舞われ、センター周辺もやっと積もったと思えば気温が上がり、地面が丸出し状態になる繰り返し。このまま春を迎えてしまうような気分でいたが、ようやく、2月初旬の週末に20センチほどの積雪があり、冬らしい景色が広がった。

 そんな中での子どもたちの様子はと言えば、やはり、雪が降れば自然と外へ。そして、全身雪まみれになって遊ぶ姿や表情、山中にこだまする喜々とした声からは、心身ともに大自然の中へ解放されたひと時であることが感じられ、何とも微笑ましくも、ようやく寒さ厳しい雪国暮らしの中にある、「ならではの楽しさ」を体感してもらえたことへ嬉しさと安堵感が広がる時間でもあった。
 というのも、実は、雪がないのをいいことに、大町市内で行われる伝統行事「あめ市」へ参加するにあたって、八坂から大町への往復を、山中の古道を繋いで歩く計画を立てていた。雪がない山中で歩きやすいし、毎日の通学路で鍛えた足腰を最後に試す良い機会と捉え計画を立てていた矢先、予想外の積雪。雪道を行くのは大変かと思いつつも、なんとかなるさと実施へ踏み切った。結果は......、雪の「おかげさま」。活動の幅が大きく広がり、道中の雪合戦はしかり、動物の足跡探しや、木々を揺さぶり雪降らせ、雪を転がし大きな玉作り、雪へのダイブ、新雪を口へ含み喉を潤し、足が埋もれる下り道を転倒恐れず思い切り駆け下り......、とにかく終始子どもたちの声が山中に響き渡り、往復14キロという距離を忘れさせるくらい、子どもたちが躍動する展開となったのだった。
 山の中に雪がある。共にその環境を楽しむ仲間がいる。それだけで条件は充分。大人は、見守りつつ一緒に楽しみ、後からついて行くだけの存在で充分。
 雪不足、されど、「足るを知る」には不足なし。「不」からの学びはここにもあった。















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