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子どものころに見たもの

山村留学指導員 有坂亮祐

 十二月の中頃、バドミントンの試合があった。試合のある日は留学生の帰りが遅い。バスは学校に到着するので、早めにセンターを出て、留学生の到着を学校で待つ。
 夜空に星が輝いているのを見て、ふと昔のことを思い出した。

 私が小学生のころ、「星空が見たい!」と親に頼みこんだ覚えがある。星が川を作る話を聞いて、実際に見たいと強く感じたのがきっかけだったと思う。
 当時、星が川を作るなんて想像もできなかった。東京育ちの私は、夜空に見える星々はオリオン座ぐらいしか知らない。数えられる程度の星しか見たことがない私には、にわかには信じ難かった。
 父親に連れられて山奥へ行く。車から降りて空を見上げると、東京の空よりも多くの星が見えた。しかしそれは、「川」と呼べるほどのものではなく、想像よりもはるかに少ない星にがっかりした。
 
 留学生が寝た後、たまには星でも見ようと外に出た。最初から星がたくさん瞬(またた)いていたが、時間が経つにつれ光が増していく。次第に夜空にうっすらと白いアーチがかかっているのが見え始めた。
 そのアーチは星の集まりで、「ああ。これが天の川なのか」と、目からうろこが落ちた。
 それから何度か天の川を見に行った。何度も見ているうちに感動も薄れ、天の川が見えることが当たり前になっていく。いつの間にか、子どものころに山奥で見た星のほうが輝いているように思えてきた。
 そんなことを思い出していると、試合へ向かっていたバスが到着した。留学生はバスから降りると、「うわ! めっちゃ星キレイ!」と言った。確かに星はたくさんある。
 子どものころに見た景色は日に日にきれいなものになっていく。今日の星々は、留学生の心の中で、時間とともに輝きを増すのかもしれない。















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