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「樹木を知らないと...」

山村留学指導員 戸田佐和子

 正月事始めの頃から、小学生はわら細工教室に参加し正月飾りを作ったり、学園では恒例のお正月準備活動を幾つか行ったりした。

 昔の煤払いが現在の姿に変わった大掃除から着手し、御供え(鏡餅)作り、門松作りを取り上げてみた。帰省時に持ち帰れるものをと、これまでは注連飾りやミニ門松作りを交互に採用してきたが、今回は売木村ならではに重きを置き、村固有の文化や風習を少しでも学園生に体験させたいと考え、学園に門松を立てることに。
 お正月には年神様が山から降りて来てくれることを願い、目印に門松を立てる。門松といえば、三本の竹を斜めに切り、根元に松の葉を配して俵で巻いた姿を思い浮かべる。しかし、売木の伝統的な門松は、その字の通り門の形をしており、それを立てるにはまずハングリ様を用意する。適当な太さ・長さの栗の木を山から伐り出してきて皮を剥き、二本立てるのだ。そのハングリ様に枝が三段か五段についた松を山から二本伐ってきて迎え括りつける。左縄に綯(な)った注連縄を渡し、藁を漏斗状に編んだ供物用の器「おやす」を結び、「おたから」(紙垂)を切ってつけたら門松の完成。一同喜んだ。
 年が明け、門松を納めた後も、ハングリ様はそのままに。小正月(百姓の正月)になると豊年満作を願い、そこに切り直して新しくした松を縛りつけ、周りにオニギを中が見えない程立て掛け、俵に見立てたものを飾ったハザを作った。ハングリ様は、お正月にも小正月にも松を括りつける支柱や御飾りの土台となるものだとわかった。
 昔から脈々と受け継がれてきた門松や小正月の飾りもの作りを楽しみつつも、沢山の材料と労力が要ることを知った学園生たち。栗・松・白膠木(ぬるで)・冬青(そよご)、割れの良い雑木など一連の活動に必要な材料は、村長さんと一緒に山へ入って教えていただき調達したり、予め伐木(ばつぼく)してもらったり。樹木の名前・特徴・生育地等を知らないと全く成立しない活動だと気づいた。















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