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塩の道を走って

山村留学指導員 大山楽人

 「塩の道を走りたい。」個人体験の内容について相談している時、ある学園生が言った。
 「塩の道」は松本から糸魚川へと続く全長約百二十キロの古道で江戸時代頃に物の流通などで使われていた道だ。

 学園生の中には古道が好きな子も多く、この「塩の道」に行きたがる子は少なくない。しかし、大抵の子は、道の途中にある遺跡や、石仏を見たり、歴史を調べたりする一環で歩く事があるが、この子のように「走る」というのは珍しい。しかも、小五という学年で。
 挑戦は、信濃大町駅から糸魚川の日本海までのルート約百キロを三回に分けて走るというものだ。一日三十?四十キロほどの距離を走るということで付き添いの私も覚悟が必要だった。
 私は、本当に走るのか何度も確認したが本人の意思はぶれていなかった。
 
 当日、塩の道は初めのうちは、舗装された道路が続き、足にも負担がかかった。中盤は、いくつもの峠を越え、最後は、標高八〇〇メートルほどの高さから一気に海まで下る。とても普通の人がやることではない無謀とも言える挑戦をその子は成し遂げた。挑戦中は目的地に向かって黙々と走り、一度も弱音やあきらめるような言葉を使わなかったのには、脱帽した。
 
 「もう無理だ」とあきらめてしまうことがだれにでもある。しかし、この子のように「絶対に走り切ってやるんだ」という強い意志によって、大人の想像を軽々と超えてくる子もいる。子どもには、様々な可能性があると改めて感じる。
 学園生に対し初めからこちらが限界をつくることはせず、その可能性を引き出し、背中を押してあげることが我々の役割なのだろうと感じた体験となった。















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