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嬉々として

山村留学指導員 坂本明日香

 今年度も、大勢の方に足を運んでいただき、収穫祭を盛大に開催することができた。二十三期生が作り上げた収穫祭は、準備は少し遅くなったけれど、二十三期らしい収穫祭になったと感じる。

 収穫祭での発表の一つに、山村留学生活の中で、興味を持ったり、不思議に思ったりしたことをテーマに、それぞれが体験をしたことを発表する、個人体験発表がある。自分で実際に体験しながら、様々なことを感じ、考え、深めていくという過程は、なかなか普段の生活の中で簡単にできることではない。この「個人体験」に取り組む時間こそが、山村留学の中で、とても重要な時間だと改めて思う出来事があった。
 収穫祭が近づいてくると、子どもたちはいつにも増して慌ただしい。特に、まとまった時間のとれる休日には、それぞれの取り組んでいる個人体験のラストスパートをかけるのだ。「外に行って、〇〇してくるね!」「この時間で△△できるかな?」と、寒空の下、作業を続ける子、地域の方のお宅を訪問する子など、それぞれが時間を忘れて取り組む姿があった。
 一方、なかなかテーマが決まらずにいた子は、忙しそうにしている皆を横目に、学習室で本を読み、時には布団に潜り込みお昼寝。焦るわけでもなく、飄々(ひょうひょう)と自分のペースで休日を過ごしていた。しかし、興味を持てるテーマが決まると、その子の様子は激変した。
 休日になると、誰に言われることなく、外へ飛び出して行き、材料を集め、火を起こし、消し炭を作る作業を繰り返した。地域の消し炭作り名人に作り方を教えてもらった時、いとも簡単にしていた作業が、実際に自分でやってみると難しく、失敗することもあった。しかし、大好きな火を起こせる楽しさに目を輝かせながら、何度も何度も消し炭作りをしている姿は、まさに嬉々としている姿だった。
 個人体験を通して、嬉々とする体験ができた子は、きっと少なくないはず。この経験が、彼らの心の奥深くで燻り続けることを願っている。















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