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紅葉

山村留学指導員 有坂亮祐

 山の木々がカラフルになってきた。毎年のことだが、山というのは気づいたときには赤く染まっている。一日おきに山を見ても、山の色が変わっているようには思わない。紅葉は一体いつから始まっているのだろう。

 十月中頃、留学センターの活動で稲刈りをした。中学生は部活があるため、小学生のほうが田んぼに関わっている。だからか、田んぼに到着し、頭(こうべ)を垂(た)れる稲穂を見たとき、小学生の口からは自然と感嘆の声が漏れた。
 現地で早速稲刈りを始めた。腰を下ろし、稲を刈るのは思っていた以上に力が必要だったのか、開始早々弱音を吐いていた。弱音を吐いても稲刈りは続く。刈り終えたあとは結束をするが、これが一番大変な作業だ。地元の方に結束の仕方を教わりながら作業を進める留学生だったが、終わりの見えない作業に途方に暮れ始めていた。
 去年、稲刈りをしたときも似たような状況だった。しかし、今年は手を止める子どもが少なく、弱音を吐きつつも作業はしているのである。今までは、つらさのあまり、途中で手を止める子が多かった。稲刈りの計画しているとき、留学生の今までの様子を加味したが、今回は予想以上の働きだった。
 結束をし終え、稲をトラックに積み込み、稲架けの現場へ向かう。ほんの数時間前は黄金色だった田んぼが土の色に変わっている。稲がなくなった田んぼの真ん中を堂々と闊歩(かっぽ)する留学生はなんだかいつもよりも頼もしく見えた。
 なぜ、普段よりも留学生が農作業に集中して取り組んだのか。留学生が精神的に成長したからなのか、それとも、地元の人と一緒になって活動することができたからなのか。
 人間が成長するきっかけというのはどこにあるのかわからない。もしかしたら毎日少しずつ成長しているのかもしれない。周囲の人間がその成長に気付くよりもさらに前に、その変化は始まっている。気づいた時には成長しているその様子は、いつの間にか赤く染まっている木の葉のようだ。















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