また山に登りたい?
山村留学売木学園
山村留学指導員 戸田佐和子
帰園し、二学期が始まってすぐの週末に木曽駒ケ岳登山をした。毎年、登山計画を立てるものの、ここ数年は様々な理由で中止せざるを得なかったり、日帰りピストンや別の活動に変更したりすること続きだった。だから、中央アルプスの最高峰へ山留生が山小屋泊の山行を決行できたのは久方ぶり。
数あるルートの内、木曽側からの上松Aコース(標高差約千九百m・登りコースタイム七時間・下り四時間三十五分)を選択。『信州の山 グレーディング』では、体力度五(十段階)・登山道の技術的難易度C(五段階)で評価されているコースだ。子どもたちには、厳しい登りに耐え、登頂して達成感を味わい、自信を持ってほしいと強く望んだ。同時に、日々自ずと鍛えられている山留生なので、頂上に立ち、無事下山できることを確信していた私。実際には、学園生活の懸案事項の一つだった食事に長時間かかることが活動時にも持ち上がり、それが原因で登山や下山開始が遅れたことに加え、コースタイムよりも随分かかったり、山小屋着も遅れたために登頂を翌朝に変更したりした。弱音を吐いたり、テンポよく下山できなかったりした子たちもいたが、二日間にわたり十五時間、皆本当によく歩いた。自分の足で一歩一歩進む以外に何の方法もない、頼れるものは己だけという状況下、困難の末辿り着いた頂上では、達成感が込み上げ、成功体験を得た様だ。
登山は山頂に到達するという目標があり、成否の基準が明確。しかも自分の頑張りによって誰でも成功者になれる絶対評価的なもの。絶対的基準によって成功を体験できた貴重な活動となり、克己心を養い、自己肯定感も高められたと思う。また、美しく厳しい自然を五感で経験し感動と畏怖の念を抱いたり、困難な課題を仲間と一緒に成し遂げたりと、かけがえのない体験に。山小屋泊では電気や水・食物など、当たり前と思っている便利な日常生活のありがたさを感じ取っていた。ただ、過程が想像以上の試練として記憶に残ってしまったかも......。