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指導員になって
くらぶち英語村
山村留学指導員 江田静香
初めて倉渕(くらぶち)に越してきた日は、忘れもしない。四月なのに雪が降る寒い日だった。東京出身の私は驚きを隠せず、とんでもない田舎に来てしまったのだと感じた。
あれから四ヶ月が過ぎた。色とりどりの花が咲き始め、春が訪れたと思ったら、あっという間に葉っぱが濃い緑に変わり、夏を迎えた。東京で働いていた頃は、こんなに季節の変化を味わったことが無かった。
都内は大きなビルと沢山の人で溢れかえって忙(せわ)しなく、自然を感じる機会などほとんど無かった。
今思えば、そんな気持ちの余裕も無かったのかもしれない。倉渕に来て、百八十度ガラリと変わった生活に初めは戸惑っていたが、大自然と人の温かさに触れ、今では心地の良い場所になっている。
通年の子ども達は、夏休みで帰省し、英語村が静かになった。そう思ったのも束の間。夏の短期コースが始まった。その子ども達を見ていると、通年の子ども達が、初めて英語村に来た時のことを思い出す。
四月六日の入村式。ワクワクよりも、緊張と戸惑い、ここで本当にやっていけるのかという思いが表情から読み取れた。更に英語村では言語という壁もある。
年齢や英語の慣れの差があり、それに加えて英語での生活指導が入ってくる。初めての場所で初めて会う仲間と英語漬けの毎日。戸惑わないわけがない。特に最初の一ヶ月は、子ども達にとって過酷な日々だったと思う。
それが今では、毎日のルーティンをこなし、一学期が終わる頃にはすっかり表情が変わっていた。戸惑いから出発し、仲間との関係や自分自身と向き合い、色んな心の葛藤が沢山あるだろう。
私はそれも、ここでしか出来ない体験の一つとして是非学んで欲しいと思う。自分の内側との向き合い方を、なにか少しでも得て欲しい。そんな時に側で見守り、支えてあげられる存在でありたい。
それは、私がここへ来た理由の一つでもある。この一年で、子ども達がどのように成長を遂げていくのかが、とても楽しみだ。