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おいしい算数
神河やまびこ学園
山村留学指導員 水落碧衣
午後三時のおやつ。他の子どもにとっては当たり前のように食べているかもしれないが、食べる回数が少ない山村留学生にとっては宝石のようなもの。
「今日はおやつがあるよ」と言うと「イエーイ!」「今日は何が出るの?」と目を輝かせる。内容は子どもたちの手作り菓子や、収穫したばかりの野菜をまるかじり等様々だが、どれも喜んで食べてくれる。子どもの幸せそうな顔を見ると、こちらも満ち足りた気持ちになる。
ある日、私が子どもたちのおやつを準備していると、菓子が十個しかなかった。子どもの人数は十一人。あと一人分は他の菓子で代用したが、種類が違う菓子を誰が食べるのか......。
主任指導員と相談していると、「子どもたちで話し合って決めたらどうなるのだろう?」という考えが浮かび、子どもたちに話し合いをさせてみることにした。
おやつの時間。ホワイトボードには「おいしい算数」の文字。きょとん、とする子どもたちに事情を説明し、「みんなが納得しておやつを食べるにはどう分けたらいいか」を聞いてみたところ、様々な反応があった。
「種類が違うお菓子を人数分に砕いてみんなで分けよう」「希望をとってその人たちで相談して決めればいいよ」「もう全員でじゃんけんして、勝った人から好きなのを取ればよくない?」様々な意見が飛び交う中、紙と鉛筆を持ち出して割り算を始め、「どうしよう、割り切れない......」と頭を抱える子も。数十分後、大人の助言を受けながらも菓子を分けることができた。
みんなが平等に同じものを食べられる方法にこだわる子もいれば、じゃんけんで選択権を決める子もいる。そんな中、子ども同士でうまく折り合いをつけ、全員が納得した形で菓子を分けることができたことに驚いた。言い合いなどもなく、終始穏やかな雰囲気だった。
山村留学生活が始まって約三ヶ月。集団生活をしていく中で必要になる「気遣い」の心が培われているのを実感したひとときだった。