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烏川での釣りから

山村留学指導員 浅平泰地

 英語村の裏には烏川という川が流れている。イワナやヤマメがいる川だ。昨年くらぶちに来てしばらくした頃、烏川に釣りに出かけた。しかしなかなか釣れない。結局三度ほど釣りに出かけたが、最後に1匹釣れたきりで、すっかり川から足が遠のいてしまった。それからは、烏川は退屈な川になり、ただの風景の一部と化していた。

 今年の春、烏川での釣りが解禁し、約半年ぶりに釣りに行ってみた。出会った釣り人に、今年はルアーがよく釣れているらしいと教えてもらった。それまではずっと餌釣りしかしてこなかったが、試しにルアーだけ購入してみた。ルアー以外、ありあわせの道具で川に行くと釣れた。28センチのヤマメだ。自己記録を3センチ更新する大物だった。狙った場所にルアーを投げ込む、アクションを入れて魚を誘う。そして訪れる、魚がルアーを咥えて身体をよじった手ごたえ、水中の魚体の煌めきに酔いしれた。ルアーでの釣りが驚くほど肌に合った。それからというもの、こつこつと道具を集めながら、今は週に何度も川に足を運んでいる。
 ほぼ1年間退屈だった川が、ごく小さなきっかけで最高の遊び場に変わった。しかし実際のところ、川はなにひとつ変わっっていない。もともと魚はいて、去年からそこに流れていたのである。ただ、自分に合った川との付き合い方を見つけたことで、感じ方は一変した。
 昨日まで取るに足らないと感じていても、自分に合った付き合い方を見つければ、素晴らしいものに変わる。付き合い方を知らないだけで、その価値に気づけていないものがどれほどあるだろうか。
 視点を子ども達にまで広げてみよう。くらぶちに1年間生活する英語村の子ども達の目に、川や山や、くらぶちの環境はどう映っているだろうか。自然豊かな地域だが、そんな環境との付き合い方を、どれだけ発見できているだろうか。
 彼らに合った「付き合い方」を見つけるための示唆を日々を与えられる指導員でありたいものだ。















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