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「考えて遊ぶ」

山村留学指導員 邑上貴厚

 私は、冬という季節が好きだ。それは冷たい乾燥した空気だったり、目を奪われるような白銀の世界だったりというようないわゆる冬の風物詩的なものが好きだからではない。

 私は、冬になると心が踊り出しそうな、そんな胸騒ぎを覚えるのだ。「さぁ、どんな事をして遊んでやろうか。」とワクワクが止まらない。そこには、自分が山村留学生だった頃の、農家の父さんが言った一言が、大きく影響している。
 時は遡り、18年前。私は小学4年生で山村留学をする事を決意した。4月も半ばを過ぎた頃、初めて農家での生活を送ることとなった。ある時父さんが、私に対してこんな事を言ったのだ。
 「おい、貴厚。考えて遊べよ。」
 私は最初何を言われているのかよく分からなかった。しかし、冬が訪れた時、その言葉を少しずつ理解することができた。
 しんしんと降り積もる雪景色を見た。山も、畑も道路も、真っ白だった。
 その景色を前にすると、なんでもできそうな気がしたのだ。
 「今日はどこにソリを担いで行こうか? かまくらも作れるかもしれない。雪合戦も楽しいかもしれないぞ...。」
 今まで、どうやって遊んで良いのやら皆目見当もつかなかった野山が、突如として遊園地となったのである。
 現在私がいる兵庫県神河町でも、雪が積もると、私も子どもたちも「ソリコースをみんなで作ろう!」「あっちの山にも行ってみたい!」と遊びの話題で持ちきりになる。遊んでいるうちに「ここにジャンプ台を作ってみようか。」「コースの終点にかまくらを作ってみんなが休めるようにしよう。」と遊びが深まっていく。
 自然の中で遊ぶということは、形も何も決まっていない中で遊ぶという事。どうしたらより楽しくなるか自分の頭を使って考える。
 「考えて遊べ。」
 シンプルだが、深い意味を持った言葉だと冬が来るたび、私は思うのだ。















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