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『決断』

山村留学指導員 水落碧衣

 収穫祭を終えるとすぐに、冬が訪れる。今年は暖冬のせいか中々雪が降らず、気温もゼロ度あたりをウロウロ。代わりに田んぼ一面に霜柱が立ち、また違った冬らしさをもたらしてくれている。

 朝、用事があって学校へ行く途中、田んぼから煙のようなものでモクモクしている光景を見た。「野焼きでもしているのかな」と思って近づいてみると、霜が溶けて空に上がる水蒸気だった。太陽に照らされて輝く白い靄、普段だったら気にならないような日常風景なのに、この時は不思議と見とれてしまった。「都会では、鍋の上でさんざん見ているのに、田んぼの上だとなんてキレイなんだろう...」
 都会ではなかなか見られない、山村ならではの光景だと思った。
 山村留学ならではの体験はたくさんあるが、中でも一番大きなことは「来年度のことを自分で決める」ことだ。留学生活が半分を過ぎ、残り数か月は、来年度のことを視野に入れて生活しはじめる。継続して更に充実した山村留学生活を送るのか、地元の学校に通って、山村留学で培った経験を生かしていくのか。
 「自分の人生は自分で決めて欲しい」という願いの元、指導員はアドバイスをするものの、答えを誘導するような発言はしないようにしている。
 悩んでいる子どもたちをみていると、自分が留学生だった時のことを思い出す。今までは親に言われた通りに生活してきたのに、突然自分で選ばなければならないのはとてもつらかった。
 親と夜遅くまで話し合い、時には衝突して涙を流し、継続をさせてくださいと懇願した時のことは今でも覚えている。でも、そこまで考え抜いて出した自分の答えだったからこそ、今があるのだと思うし、後悔は少しもない。自分と向き合って出した答えだからこそ、自信をもって言えるのだ。
 留学生にとって、つらい時期だ。その中でも過去、現在、未来すべての自分と向き合って、自信を持って言える答えを導き出してほしいと思っている。















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